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【法話】本気の育て方②

イッツオーケー 

 

教育ジャーナリストの野口桂子氏が自著『あなたの子どもを救えますか』の中で、夫の転勤に伴ってニューヨークに滞在中、2人の子どもを現地のミルトンスクールという小学校に通わせた体験記を綴っている。

その中で特に印象深かったのが、美術のクラスで子どもたちに配られる「It’s    OK to~」(~してもいいですよ)という許可証だ。野口氏ご自身による日本語訳ではこういう内容だ。

 

許可証

①知らないことに挑戦しても構いません。

②間違ったっていいです。

③時間をたっぷり使っていいですよ。

④あなたのペースでどうぞ。

⑤あなたのやり方で結構ですよ。

⑥成功するには失敗を恐れちゃダメ。その次の成功に結び付けるためにもヘマをしちゃってもいいんです。

⑦あなたが馬鹿みたいに見られても気にしないで。

⑧周りの人と違っていていいのです。

⑨あなたの準備がきちんと整うまでは始めなくてもいいのです。

⑩安全に十分に気を配れば、実験してみてもいいですよ。

⑪「どうしてこんなことしなくちゃならないのかな」と疑問を持っても構いません。  (※数字は筆者補)

 

あなたがあなたらしくあるということは、とても大切なのです。

ときには周りをめちゃめちゃに汚すことだって必要なんです。後片づけをする気があればの話ですけど。

創造的な仕事をするときは、周りがめちゃめちゃになりやすいものなのです!

 

あくまでも個人の見解だが、日本の一般的な教育現場では、とかく「~しなさい」「~してはいけません」という事項が前面に押し出され、子ども一人ひとりの自主性よりも、教室の秩序を保つことに重点があるように感じる。

協調性を養うためにはそれも大切な教育かもしれないが、はじめから命令と禁止の羅列では、子どもの中から自分の本当にしたいこと、本当に考えていることが素直に外に現れないのではないか。

そういう他律的な環境に飼い慣らされた子どもは一見とてもいい子であるが、社会に出た後に果たして自分が満足できる人生を自分の力で切り開いていくことができるのだろうか。

 

「正しさ」より「正直さ」

 

本来何をするのも自由だし、自分が本当に好きなことをすればいいのに、人の評価を気にすることによって、いつしか「~べき」「~はず」といった外側の様々な価値観に囲まれ、私たちはどれだけ本当の気持ちに蓋をしてきたことか。

そうやって他者の評価に依存して生き続けたとして、この世の万人に評価されることなど決してないはずなのに。

それはお釈迦様の時代からそうで、『法句経』でもこう仰っている。

 

人は黙して坐するをそしり

多くかたるをそしり

また 少しかたるをそしる

およそこの世に

そしりを受けざるはなし

 

だとしたら、世間の評価にあまり振り回されず、誰かに批判されようが、結果がどうであろうが、自分の本当の気持ちにしたがって生きることだ。

極論かもしれないが、この世に完璧に正しいものなど存在しないのだと思う。 

そんな幻想の「正しさ」を追い求めるより、「正直さ」を大切にしたらどうか。

すぐに実行できることではないかもしれない。でも本気で生きるにはそれしか道はないように思う。

「こうしなければ」「ああしてはならない」と自分の心を自分で縛りつけるようなことをしないで、少しでもいいからオーケーサインを出してみようじゃないか。

いつかきっと「世界が変わってくる、自分が変わってくる」と信じて。

 

 

 

【『天台ブックレット』第88号掲載】

【不許無断転載】

 

 

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